ハートウォーミングなお話、『人生、ブラボー!』を観てきました。何といっても惹かれたのはその斬新なストーリー設定。
42歳の独身男ダビッド。借金はあるは、妊娠した恋人には三行半を突きつけられるはのダメ男。ある日弁護士を通じて、過去に693回行った精子提供のバイトの結果として生まれた533人の父親であることがわかった。そして、そのうち142人が、遺伝子上の父親の身元開示を求める訴訟を起こす予定だと知らされる。ふとしたきっかけでそのうちの1人が応援しているサッカーチームのスター選手だと知り、興味を抱き・・・。大人ファンタジーなヒューマン・コメディ。全編仏語のカナダ作品です。
多くの映画でありとあらゆる設定が出尽くした感のある中で、突拍子もないけど、でも実際起こり得るかも・・・と思える辺り、興味深々です。
精子提供によって生まれた子供たちというセンシティブな題材でもあり、大人の事情、難しい問題を含んでいるので、裁判の内容等は語られないのですが、人との絆、父親としての自覚が生まれていくダビッドの姿に焦点を当て、丁寧に描かれている点に好感が持てました。散りばめられた笑いも秀逸です。原題のSTARBUCKは精子提供の時に使用した仮名なのですが、カナダの超優良種牛の名前。この名前がストーリー上で活きてくる。
精子提供に秘められた裏話で、小さなパズルのピースがピタッとはまります。ダビッドいい奴!とすっかり彼の魅力にハマってしまうマジック。そう、ダメ男なんだけど、思いやりがあって本当にいい奴。
演じたパトリック・ユアール(Patrick Huard)の、ダメ男から次第に父親としての責任感に目覚めていく変化が自然で、本当に成長しているようで、彼の演技でこの突拍子のない設定が上手く中和されて受け入れやすくなっていると感じます。
心地よい浮遊感と絶妙な笑いがハリウッドでどんな風にリメイクされるのか、楽しみでもあります。
「やったよダビッド!!」